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産後は要注意。あなたの骨盤危険度と産後の正しい骨盤ケア方法

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<監修>

叶谷愛弓先生

叶谷愛弓先生

経歴:
東京女子医科大学医学部出身
医師
博士(医学):東京大学医学系研究科で取得
関東労災病院
長野県立こども病院
虎の門病院
東京警察病院にて勤務経験あり

専門分野

周産期
女性ヘルスケア

目次

妊娠中から産後にかけて起こる骨盤への影響

妊娠中から産後にかけて起こる骨盤への影響

産後の体の中でも、特に重要なのが骨盤ケア。
骨盤は妊娠・出産により大きなダメージを追っており、ダメージを受けた状態を放置しておくと将来的に尿もれや子宮が下がって くるなど影響が出る可能性があります。
まずは、産後の骨盤がどのような変化を受けるのか知っておきましょう。

妊娠中の長期間に渡る負荷

妊娠中、骨盤には多くの負荷が長期的に発生しています。
胎児や胎盤、羊水の重さを支えながら、正しい位置で健やかに育むサポートをしているのが骨盤です。変化する母体の姿勢維持や、日常動作に柔軟に対応しているのも骨盤。骨盤や周囲の筋肉(骨盤底筋群)、骨盤や子宮を支える支持じん帯は、妊娠期間中ずっと負荷がかかっているためダメージも大きくなります。
さらには分娩に備えて骨盤を開き、緩むような作用も働くため、より影響は大きいと考えます。

分娩による損傷

骨盤や骨盤底筋群、支持じん帯は、経腟分娩自体でも損傷を受けます。
胎児はダイナミックな動きをしながら狭い骨盤をうまく通過し、分娩に至るため、それに応じて骨盤の形態も変化します。胎児の大きさや位置、分娩時間、骨盤の形態によって多少の違いはあれど経腟分娩の経験がある方全員が骨盤および骨盤周囲の組織になんらかのダメージを負うと考えられます。恥骨結合が離開し産後しばらく歩けないという方もいます。
さらに、最近では無痛分娩が多く行われるようになったため、分娩時間が長引く傾向にあり、より骨盤底筋群やじん帯に影響を与えるようになると考えられます。鉗子分娩や吸引分娩も増え、それに伴い直接的な筋肉のダメージも増える傾向にもあります。

骨盤底筋群やじん帯の損傷が将来的な骨盤底機能の低下を引き起こす!?

骨盤底筋群とは子宮や膀胱、腸など骨盤に存在する臓器をハンモック型に支える筋肉の総称であり、分娩によるダメージにより様々な影響をきたします。

●尿トラブル:尿漏れは分娩前後に起こりうる代表的な症状です。経腟分娩後は程度の差はあれど、どんな人でも尿漏れは存在すると言われ実に4割程度の人が困っているとの報告があります。特に分娩時間が長い場合、児頭が骨盤内に留まっていた時間が長いため膀胱周囲の神経損傷も大きく排尿・蓄尿に問題が出ると言われています。鉗子分娩や吸引分娩など器械分娩を行なった方ではより顕著となる可能性があります。さらに、尿トラブルは一旦改善したとしても、将来的に再発し尿失禁などを引き起こすとも言われています。

●骨盤臓器脱:子宮や膀胱、腸を支えている筋肉の総称である骨盤底筋群が経腟分娩により損傷することで支えられなくなり、骨盤臓器が下がってしまう疾患のことです。膀胱が下がることを膀胱瘤、子宮が下がることを子宮下垂や子宮脱、直腸が下がることを直腸瘤といいます。生命に関わるような病気ではありませんが、不快感や違和感、下着と擦れることによる出血、尿トラブルが引き起こされることがあり生活の質を損ないます。

●便失禁:肛門をしめる筋肉である肛門括約筋が損傷したり、その筋肉がうまく修復されずにいると便失禁が生じることがあります。分娩時間の長期化により肛門を支配する陰部神経へのダメージが生じ便失禁をきたすこともあります。

●腟の緩み:分娩によって骨盤底筋が引き伸ばされるため腟をしめる力が低下し、腟が緩んでしまいます。湯船に浸かった際にお湯が漏れたり、性生活の満足度も低下することも考えられます。

その他、骨盤痛や性交渉痛などが引き起こされると言われています。
すべて命には関わらないものの、著しく生活の質を低下させる症状です。このような症状があるにも関わらず、多くの方がそのうち治るだろうと思って放置していたり、どこに相談すればいいのかわからない、相談すること自体が恥ずかしいといってなかなか介入できていないところが現実です。
2015年に国連サミットで持続可能な開発目標(SDGs)として「すべての人があらゆる年齢で健康と福祉を享受する」を明確に示しています。これから人生100年時代の到来です。これは最良の生活を実現するための重要な概念であり、我々はこれから自身の健康を管理し豊かで充実した生活を送るための土台を作っていかなければなりません。そのためにも、主体的に今できることをやっていきましょう。

骨盤ダメージへの対策

出産に伴う、骨盤へのダメージについては理解が深まったかと思います。それでは、これらに対してどのように対策していけばいいのでしょうか。


・骨盤底筋エクササイズ (pelvic floor muscle training: PEMT)
最も取り組みやすく、簡便な方法としては骨盤底筋エクササイズが挙げられます。 文字通り、エクササイズによって骨盤底筋を鍛えることです。最近、この骨盤底筋エクササイズは非常に注目されており、ヨガやピラティスなどのトレーニングプログラムにも組み込まれることが多くなって来ました。また、Youtubeで「骨盤底筋エクササイズ」と検索してもかなりの数の動画があげられており、わざわざジムなどに行かなくても気軽に始められるようになりました。これらの骨盤底筋エクササイズについてはしっかりとしたエビデンスがあり、特に尿漏れについては改善が期待できると言われています。骨盤臓器脱や腟の緩み、便失禁に対してはまだまだデータを蓄積しなければはっきりとした効果を示すことはできていませんが、それでもそれらに対する効果はかなり期待されています。

・妊娠中から対策は必要!?
骨盤底筋エクササイズは発症前の産前から介入することで影響を最小限にできる可能性があります。産前、つまり妊娠中から骨盤底エクササイズを行うことは分娩後の排尿トラブルをより最小限にできるという報告があります。 さらに、産後早期の介入が効果的かについても調査しており、産後12週間のいわゆる産褥期にあたるタイミングでエクササイズを行うこともその後の尿失禁予防において効果的であると言われています。つまり、妊娠中から産後早期にかけて、早い段階での介入がその後のトラブル対処については良いと考えます。

・生活習慣の改善
体操や運動として積極的に取り組むことだけでなく、骨盤底筋を意識して歩くだけ姿勢正しく立つだけあるいは呼吸方法を腹式呼吸に変えるだけでも効果がある可能性があります。腟を引き上げるようなイメージで骨盤を立てて座る、足を組まない、よく歩く、など意識するだけでも違います。

・フェムテックを利用した対策
近年テクノロジーによって女性の問題を解決しようとする動きが活発です。女性のfemaleとtechnologyをかけて“フェムテック Femtech”という造語をよく見かけませんか?このようなフェムテックを利用することで産後の骨盤トラブルに対処することができます。具体的にどういったものがあるのでしょうか。
 
 

ゲーゲルボール

 欧米などでよく使われているもので、ドラッグストアやスーパーマーケットに置いてあって簡単に手に入ります。腟の中に入れて日常生活を送るだけで骨盤底筋のトレーニングになる優れものです。動いていないとトレーニングにはならないので入れておくだけで良いものではありませんが、金額もそれほど高くなく簡単に始められます。ボールの大きさも段階があり、自分にフィットするものを選ぶことができます。また、最近はアプリと連動してトレーニングができるようになるキットも登場しました。ゲーム感覚でエクササイズができ、わかりやすい点も支持されています。

 

腟レーザー(CO2フラクショナルレーザー、YAGレーザー、腟HIFU等)

  上記フェムテックでも効果がない場合、自費治療で高価にはなりますが腟レーザーというものも選択肢に挙げられます。腟内にレーザーを照射することによって腟の表面に作用し腟が引き締まる効果を期待するものです。それぞれのレーザーの種類によって効果を発揮する場所が違うため、厳密には適応は分かれますが腟と尿道周囲の組織が引き締まり、尿漏れや骨盤臓器脱、腟の緩みなど産後の骨盤ダメージに対しては効果的であると考えます。特に尿漏れに対してはエビデンスも確立しており、特に欧米諸国における腟レーザーの推奨度は高いです。

骨盤底エクササイズをやってみよう!

骨盤底エクササイズをやってみよう!

自身の骨盤・骨盤底筋の様子も理解でき、関連するトラブルについても知識を深められたのではないでしょうか。理解した後は、正しい骨盤ケアを始めるのみ。ここからは、産後の骨盤ケアの正しいやり方についてご紹介します。

ストレッチ

産後の女性にとって、ゆっくり座っている時間などほとんどないでしょう。そこで今回ご紹介するのは、立った状態で行えるストレッチ方法です。まず両脚を、肩幅より少し狭く開きます。足と足の間に、こぶし1つが入るくらいの感覚です。その状態から、右手で右足の甲を持ち、お尻に近づけるように膝を曲げます。この時、お腹に力をいれましょう。意識できる女性は、下腹部を意識します。太ももの前側の筋肉を伸ばすように意識し、ひざを後ろに引きます。この位置をキープし約15~30秒数えましょう。終わったら、反対側の足も同じように伸ばします。初めての場合、片足で姿勢をキープするのも難しいため、壁の近くで行うと安全です。

下半身筋トレ

立ったまま行える骨盤底筋トレーニングをご紹介します。まずは膝を曲げた状態で、両脚を肩幅の2倍程開きます。膝は外側、つま先は45度くらい外側を向くようにしましょう。スクワットのスタート姿勢、もしくは相撲の四股のようなイメージです。太ももが床と平行になるくらい腰を落とす必要がありますが、最初は無理のない位置からで問題ありません。姿勢ができたら、膣圧を意識しながら立ち上がります。足の位置を変えず、腰を上下させましょう。ポイントは膣圧と腰の動き。立ち上がる時は膣をキュッと締めるよう意識し、腰を落とす時は膣を緩めるよう意識します。常に締めていることが重要なのではなく、締める・緩めるを自分の意思と加減でコントロールできるようになることが重要です。

まとめ

妊娠中はもちろん産後もまた非常に忙しく、自分の体よりも赤ちゃんを優先するママがほとんどでしょう。
しかし,分娩を終えた女性の体は想像以上に傷ついており、赤ちゃんと同じくらい労わってあげなければなりません。骨盤や骨盤底筋群の不調、関連するトラブルに目をつぶっていると、赤ちゃんとの健やかな日常にも影響を及ぼしてしまいます。早期に、そして的確にケアすれば、より楽しく充実した日々を送れるようになるでしょう。
また骨盤ケアは、継続も重要です。骨盤・骨盤底筋群は加齢やホルモンによっても衰えるため、若いうちから骨盤ケア習慣を身に着けておくと、いつまでも若々しくそして健康的な生活が送れます。

参考文献

1. Harvey, M. A. Pelvic floor exercises during and after pregnancy: a systematic review of their role in preventing pelvic floor dysfunction. J. Obstet. Gynaecol. Can. 25, 487-498 (2003).
2. Tsujino, K., Ohtaka, C., Nakata, H. & Miwa, K. Pelvic floor muscle exercise for prevention of pelvic floor disorders at each life stage in women. Japanese J. Phys. Fit. Sport. Med. 71, 271-278 (2022).
3. Romeikiene, K. E. & Bartkeviciene, D. Pelvic-floor dysfunction prevention in prepartum and postpartum periods. Med. 57, (2021).
4. https://www.mediaid-online.jp/clinic_notes/information/69/
5. https://www.youtube.com/watch?v=pWo7L9huWJ0