骨盤は自分で正しい位置に戻せる?
骨盤運動をより効果的に行うために、まずは骨盤とはどのような骨なのか知ってみましょう。そこで本項では、骨盤とはどのような骨なのか、骨盤の不調によりどのようなトラブルが生じるのか詳しく解説していきます。骨盤運動に関する文献もご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
骨盤は自分で正しい位置に戻せる?
骨盤運動をより効果的に行うために、まずは骨盤とはどのような骨なのか知ってみましょう。そこで本項では、骨盤とはどのような骨なのか、骨盤の不調によりどのようなトラブルが生じるのか詳しく解説していきます。骨盤運動に関する文献もご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
骨盤が正しい位置にいないとは?
骨盤は、上半身と下半身の中心にある大きな骨です。あまり知られてはいませんが、仙骨(せんこつ)、寛骨(かんこつ)、尾骨(びこつ)など複数の骨が集まって形成されています。寛骨は、腸骨(ちょうこつ)、恥骨(ちこつ)、坐骨(ざこつ)の総称であり、骨盤は多くの骨によって形成されていることが理解できるでしょう。
この骨盤が前方または後方に傾いたり、左右に歪んだりしている状態を、正しい位置にいないと表現します。歩行や座った際の姿勢による影響、筋肉不足、靭帯の緩み、出産や妊娠など、様々な要因によって歪みやすい部位です。
また、歪みによる影響が身体全身におよぶのも特徴と言えます。骨盤が正しい位置にいないことで、他の骨や関節に過度な負担がかかり、腰痛や関節痛などが生じるのです。周辺臓器や血管、リンパ管の圧迫による、消化器系や循環器系の不調も生じやすくなります。さらに、自律神経の乱れによる精神的負担や変形性股関節症などの病気を生じさせるなど、デメリットの広がりも起こりうるのです。
骨盤運動と骨盤体操の違い
骨盤運動と類似する言葉として、骨盤体操と呼ばれる体操があるのですがご存じでしょうか。一般的に同義語として使用されますが、骨盤体操はストレッチのような意味合いが強いです。筋肉の硬化による骨盤の歪みを解消するため、骨盤の筋肉をほぐしたり、靭帯のリラックスを目的とした体操となっています。バランスを整え、安定した状態を作るのが目的です。
一方、骨盤運動は、弱体化した筋肉の強化を目的としています。筋肉を強化するためには、硬化した筋肉をほぐしたり、緩んだ靭帯を整えたりする行為も必要となりますので、骨盤体操よりもトレーニング強度は高いと言えるでしょう。
即効性のある運動・体操はあるのか
骨盤の歪みを解消するためには、骨盤運動や骨盤体操が有効です。そんな骨盤運動や骨盤体操の中に、即効性のあるものはあるのでしょうか。インターネットを検索していると、”即効性のある骨盤運動・骨盤体操”といった文字を見かけます。
しかしながら、運動・体操直後に骨盤が元の位置に戻るような即効性のある方法はありません。骨盤は、日常生活の積み重ねによって前後左右に歪んでいきます。そして、歪んだ骨盤のまま生活していると、日常生活の様々な動作が歪んだ骨盤をサポートするように変化していくのです。そのため、仮に骨盤が一瞬で元の位置に戻るような方法があったとしても、歪んだ骨盤に合わせた日常動作によって、すぐに傾いた状態に戻ってしまいます。
また当然ながら、骨盤は運動や体操だけでその日のうちに正しい位置に戻ったりなどはしません。骨盤運動・骨盤体操を続けた結果、徐々に正しい位置に戻っていくのです。それでは、効果が表れる時期はいつ頃なのでしょうか。個人差はあるものの、2カ月~3カ月程度と言われています。これは、整体等の専門的な機関での施術も同様です。
骨盤運動に関する文献
即効性のある骨盤運動は存在しませんが、骨盤運動の有用性は文献によって証明されています。公立置賜総合病院リハビリテーション部所属及び他2名による研究によって、骨盤運動による柔軟性の有意な変化が確認されました。前屈時の可動域と、後屈時の胸椎に関する有意な変化も確認されています。研究は、身体の柔軟性と安定性を向上させると締めくくられているため、骨盤運動は有効だと評価できるでしょう。(参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/artsjpta/30/0/30_44/_pdf/-char/en)
効果的な骨盤運動5選
文献にて、有益だと証明された骨盤運動。ぜひ皆さんも、日常生活に取り入れてみましょう。そこで本項では、効果的な骨盤運動5選をご紹介します。前項でもご紹介したとおり、骨盤運動で本当の効果を発揮するためには、継続が必要です。そのため、毎日続けられると感じた運動を取り入れるようにしてみてくださいね。
①リハビリでも活躍する骨盤運動
リハビリの場でも活躍する骨盤運動をご紹介します。まず、椅子を用意しましょう。手を楽に下ろすため、肘置きのない椅子が望ましいです。身体を安定させるため、椅子に深く腰掛けましょう。ただしこの時、背もたれに背中が付かないように隙間を開けてくださいね。
手を楽に下ろし、両脚は真っすぐに床に着けましょう。まずは息を吸い込みながら腹部を前に押し出します。同時に、天井に引っ張るように頭部を上に引き上げましょう。次に、息を吐きながら骨盤を椅子の背もたれ側に引き下げ、同時にへそを覗き込むように頭部を下げます。交互に10回ほど繰り返しましょう。座りながらできる骨盤運動のため、足腰に不安を感じる高齢者にもおすすめの運動です。腸腰筋(ちょうようきん)を鍛えられ、多裂筋(たれつきん)をストレッチできます。
②寝ながらできる骨盤運動
骨盤を正しい位置に戻す骨盤運動をご紹介します。まず、仰向けに寝転がり、腕の力を抜いて床に手のひらを密着させましょう。膝同士をくっつけないように意識しながら、膝を曲げてください。立てた脚を、左右交互に倒していきましょう。5回~10回程度繰り返します。
次に、膝を曲げた状態に戻り、骨盤を腹部側にグッと引き寄せるように持ち上げましょう。臀部が床から離れるまで持ち上げますが、背中が浮いてしまわないように注意してください。ゆっくりと持ち上げた骨盤を再び床に戻し、床を押すように後傾させます。骨盤の前傾・後傾を繰り返す運動です。骨盤を後傾させる際は、背中と床に隙間ができても問題ありません。あえて反り腰を作り出します。この運動も、5回~10回ほど繰り返しましょう。
最後に、膝を伸ばした状態で仰向けに寝転がります。右脚を、真っすぐ天井側に持ち上げましょう。上半身と右脚が垂直になっている状態です。垂直に伸ばした右脚を、右にゆっくりと5回まわしてください。右にまわし終わったら、今度は左にまわします。可能な限り大きくまわしますが、脚の裏が常に天井を向いているように意識しましょう。右脚が終了したら、左脚も同様に行います。
③正しい位置に戻す骨盤運動
膝立ちの姿勢から、左脚を前に90度曲げ、右脚を後ろに下げ、半分膝立ちの姿勢を作ります。両手を左脚の横に置き、手のひらを床に密着させてください。陸上競技の、クラウチングスタートのような姿勢です。クラウチングスタートのような姿勢ですが、右膝から右脚の甲にかけて、床に密着させるようにします。
左脚の裏が床から離れないよう意識しながら、臀部を前後に動かしましょう。ハムストリング(太ももの裏)を伸ばしながら骨盤の位置を整える運動です。目線が下がり、猫背になってしまわないように注意しましょう。30秒間前後運動を繰り返したら、前後の脚を入れ替えて同様の運動を行います。
④高齢者におすすめの骨盤運動
高齢者でも安全にかつ効果的な骨盤運動です。両手を前後に振る運動のため、肘置きのない椅子を用意しましょう。背もたれは、あってもなくても問題ありませんが、腕をぶつけないように注意してくださいね。
椅子に軽く腰掛け、骨盤を立てます。天井から引っ張られるように、背すじを伸ばすのがポイントです。ただし、背すじを意識しすぎて反り腰になってしまわないように注意してくださいね。骨盤を立てる意識が重要です。正しい座り姿勢を作り、両手を振りながら座ったまま足踏みをします。太ももを高く、腕の振りを大きくするのがポイントです。20回ほど足踏みをしましょう。
1日2セット行うのが理想ですが、無理をしないように自分のペースで行ってください。下半身の筋力強化と、上半身の腸腰筋強化が期待できます。歩行時のつまずきが軽減し、腰痛にも効果がある運動です。
⑤クッションを使った骨盤運動
クッションまたは、タオルを使った骨盤運動です。膝を90度に曲げ、仰向けに寝転がります。膝と膝の間に、クッションまたはタオルを入れ込みましょう。タオルは厚みを出すため、可能な限り小さくたたんでください。
膝の間にあるクッションまたはタオルを、太ももに意識を向けながらギュッと挟み込みます。挟み込んだ後、力を入れた状態で5回ほど深呼吸をしましょう。力を緩め、再び挟み込みを繰り返します。行う回数は決まっていませんが、臀部や太ももの筋肉が痛くならないように回数には注意してくださいね。
次は、クッションまたはタオルを膝に挟み込んだ状態で、床から脚の裏を離していきます。膝の角度を90度に保ちながら、ふくらはぎと床が平行になるまで脚を上げてみてくださいね。腹横筋や腹斜筋を鍛えながら、ハムストリングをストレッチする運動です。平行になるまで脚を上げた後、5秒~10秒維持し、ゆっくりと脚を下ろしていきます。ゆっくりと動かすほど、インナーマッスルには効果的です。
骨盤運動の注意点
最後に、骨盤運動の注意点をご紹介します。骨盤運動は、骨盤を整えたり、上半身や下半身の筋肉強化ができたりなど、メリットのある運動です。ただし、注意を怠ると、骨盤の歪みや痛みが悪化する恐れがあります。特に、妊娠・出産直後の女性や高齢者は注意しましょう。なぜなら、妊娠・出産直後の女性は骨盤や周辺靭帯が変動しやすく、高齢者は長期的な治療に繋がる恐れがあるためです。
均等に行う
今回ご紹介した骨盤運動には、目標となる回数が設けられています。一度に全回数を終了させる必要はありません。1日の中で、隙間時間を見つけて目標回数を達成するようにしましょう。ただし、回数を均等に行うように注意する必要があります。
たとえば、右側のみ3セット行い、左側は1セットのみ行うなどの行為は避けましょう。左右の筋肉のバランスが崩れ、骨盤の歪みに繋がる恐れがあります。前後運動も同様です。前方だけ行い、後方への動きを減らすと、骨盤前傾・後傾が悪化する恐れがあります。もし、左右どちらか一方の運動が辛いと感じた時は、楽に行えるもう一方の運動回数も減らすようにしてみましょう。
骨折中は避ける
骨折中は、骨盤運動をお休みしましょう。身体は、筋肉や靭帯等で複雑に繋がっています。そのため、骨折した箇所と全く異なる場所の運動だったとしても、骨折箇所に負荷がかかってしまう恐れがあるのです。また痛みを感じながら運動すると、正しいフォームで行えないため、やはり骨盤運動はお休みする必要があります。
骨折中は、骨盤運動よりも、ストレッチやマッサージなどで筋肉をほぐすように意識してみましょう。骨折中だけではなく、妊娠・出産直後の女性も注意が必要です。妊娠・出産直後の女性は、ホルモンの影響から、骨盤が動きやすく歪みも生じやすくなります。そのため、骨盤運動をする際は、妊娠・出産直後の女性専用の運動を実施するもしくは、ストレッチやマッサージのみ行うようにしてみてください。
痛みを感じたらすぐに中断
痛みを感じた際は、すぐに中断するようにしましょう。骨盤運動は、継続が必要です。たとえ一日に行う運動の回数が少なかったとしても、継続することで徐々に効果が表れてきます。そのため、痛みを感じても継続する人がいるのですが、痛みの悪化や歪みの加速に繋がる恐れがあるため注意しましょう。
痛みの原因は、筋肉痛、炎症、骨折、その他にも様々な要因が考えられます。整体や病院への来院がいつ用になる場合もあるため、痛みを感じた際は無理をして続けたりせず休憩するようにしましょう。
骨盤運動で骨盤を正しい位置に安定させよう
骨盤運動は、骨盤を正しい位置に戻すだけではなく、骨盤を安定させるための筋肉強化も期待できる運動です。腰痛や肩凝り、反り腰や猫背等も解消できるため、ぜひ積極的に取り入れていきましょう。ただし、自分の身体に合った運動を取り入れるようにしてくださいね。いきなり多くの骨盤運動を取り入れても、継続が難しくなってしまいます。そのため、少しずつ続けられる骨盤運動を実施するようにしてみましょう。