骨盤ランニングではポイントを意識した走行を!
ランニングの新常識である骨盤ランニングをご存じでしょうか?骨盤ランニングは、美しいフォームが特徴です。さらに、通常のランニングよりも楽に、速く走れるようになります。しかしながら、正しい骨盤ランニングを行うためには、いくつかポイントを押さえておかなければなりません。そこで本記事では、骨盤ランニングを行う上で押さえておくべきポイント9選をご紹介します。骨盤ランニングに興味があっても、いまいちよくわからない人のために、骨盤ランニングの基本情報についても解説していきましょう。
目次
骨盤ランニングってなに?
まずは、骨盤ランニングの基本情報を詳しく解説していきます。骨盤ランニングは、速く走りたい人や綺麗なフォームを身につけたい人だけにおすすめのランニング方法ではありません。実は、骨盤の歪みや歩行・走行時の負担にも関わるため、ランニングを始めたばかりの初心者にも重要な情報なのです。
新常識骨盤ランニングとは
骨盤ランニングとは、その名の通り骨盤を意識したランニング方法です。当たり前のように感じるかもしれませんが、骨盤よりも脚の指や脚首など、末端を意識したランニングフォームが主流となっています。走る際、捻挫をしないように脚首の向きに注意したり、かかとから着地するように意識していませんか?ランナーやサッカー選手などのアスリートを除き、一般的な人たちの間では、末端を意識したランニングフォームが主流です。
一方、身体の中心に位置し、上半身と下半身を整える役割をもつ骨盤を中心に走行すると、ランニングパフォーマンスの向上に加えて、怪我のリスクや負担軽減も期待できます。骨盤は、走行時の衝撃を吸収する部位でもあるため、身体への負担を最小限にし、楽に長時間走行することも可能になるのです。さらに、中心部の骨盤が正常になると、脚首や脚の指など末端も正常化します。骨盤は、屈曲や伸展の他にも多くの役割を担っているため、正常化は末端の変化にも繋がるのです。そのため、アスリートとして活躍する人々は、骨盤を意識したランニングフォームを採用しています。
骨盤ランニングは矯正効果があるのか
骨盤ランニングには、骨盤を正しい位置に戻す矯正効果も期待できます。骨盤ランニングでは、骨盤の動きに着目し、正しい動きを意識しながら走る方法です。そのため、歪んだり傾いていた骨盤が矯正される可能性があります。
また、骨盤ランニングによる筋肉強化も、骨盤矯正が期待できる要因です。骨盤ランニングを続けていると、骨盤周辺だけではなく、腸腰筋(ちょうようきん)や内転筋(ないてんきん)、太ももの筋肉である大腿四頭筋(だいたいしとうきん)なども強化されます。骨盤を維持する際に必要とされる筋肉であり、筋肉強化による矯正も大いに期待できるのです。
ランニングでの骨盤と肩甲骨の連動性
肩甲骨は、骨盤ランニングを行う際に、骨盤と同様に重要視しなければなりません。肩甲骨は背中の上部にある逆三角形の平たい骨であり、身体の中で最も可動域の広い肩関節の一つです。
歩行や走行する際、同時に腕を前後に動かすのが一般的なフォームです。腕を後方に引くと肩甲骨が内転し、そこにエネルギーが生じ、引いた腕側の骨盤が前方に引き出されます。この動きが繰り返されることによって、腕を振るエネルギーが前方への推進力となり、歩行や走行が可能になるのです。
つまり、骨盤単体だけではなく、肩甲骨を使った腕振りも重要になります。また腕振りは、走行時のバランスを保つ役割も担っているため非常に重要です。片方の腕を後ろに振ると、手とは反対側の脚が自然に前に出ますよね。上下に相反する動きを行うことで、身体は左右にブレずにスムーズに走行できるのです。
骨盤ランニングのポイント9選
それではここから、骨盤ランニングのポイントを解説していきます。
①骨盤ランニングのやり方
骨盤ランニングでは、適度に骨盤を前方向に傾けながら、力まずに柔らかく走ります。左右の骨盤をわずかな力で回旋させ、中心(骨盤)から末端(脚の裏や脚の指)にエネルギーを伝えるイメージです。たったこれだけの方法ですが、疲労を感じにくくなり、不要な力が入らないことで怪我の防止にも繋がります。
ところが、骨盤を前傾気味にしたり、脚の付け根である股関節を自由に回旋させられない人が非常に多いです。骨盤や周辺の筋肉、靭帯等が硬化しているため、膝や足先に頼ったランニングフォームになってしまいます。
②ランニング前のストレッチ
骨盤ランニングでは、骨盤や周辺の筋肉、靭帯等の柔軟性が重要になります。骨盤を意識せずに歩行・走行している人が多く、硬化している場合が多いためです。硬化している状態では、股関節の回旋が難しく、膝や腰に大きな負担がかかってしまいます。
そこで骨盤ランニングの前に、ストレッチを行いましょう。まずは、骨盤のストレッチをご紹介します。上半身をリラックスさせ、脚を肩幅程度に開きましょう。膝を曲げないように意識しながら、骨盤を左右交互に上げ下げします。腹斜筋を利用し、骨盤を引き上げるイメージです。このストレッチを、20回~30回ほど繰り返しましょう。骨盤を、必要以上に前方に傾けないように注意してください。また、背中が反り腰になっていないか、上半身への意識も忘れないようにしましょう。
続いて、肩甲骨のストレッチです。脚を肩幅程度に開き、両腕の力を抜きましょう。両肩を上げ下げします。下げる時は両肩から力を抜き、重力のみで肩を下げるイメージです。上半身の過度な力みを排除することができます。次は、右の胸鎖関節(きょうさかんせつ)を左手で押さえながら、右腕を大きく回しましょう。腕だけに力を入れて回すのではなく、鎖骨と指先から生じる遠心力を使いながら、前回り5回、後ろ回り5回行ってください。左腕も同様です。
③骨盤から動かすローリング走法を理解する
骨盤ランニングでは、骨盤を回転させて走るローリング走法への理解も必要です。通常であれば、股関節を前後に動かすことで、太もも等の脚が連動し身体が前進します。ローリング走法は、股関節ではなく骨盤を前後に回転させる方法です。股関節の前後運動に加えて骨盤の前後運動によるエネルギーも発生するため、歩幅の広がりによるスピードの上昇が期待できます。
さらに股関節のみの運動で前進すると、走行時の衝撃を股関節や股関節周辺の一部の筋肉だけで支えなければなりません。骨盤を回転させることで、地面から受ける衝撃を大きな骨盤を含む周辺筋肉で支えられるため、身体への負担を減らし怪我のリスクも減少させることができます。
④ひねりを意識して
ランニングを始めたばかりの初心者に生じやすいのが、ふくらはぎの極度の筋肉痛です。距離や走行時間が長くなかったとしても、生じる場合があります。原因として考えられるのが、走行時の姿勢と骨盤の使い方です。
骨盤ランニングでは、骨盤を前傾にやや傾け、推進力を活用し前進します。ところが骨盤を前傾にしすぎるがあまり反り腰になり、硬化しているふくらはぎや膝等に負担が集中してしまうのです。さらに、腕の振りが甘く、骨盤のひねりが不足している可能性があります。走り姿勢を頭上から眺めた際、腕はカタカナのハの字のように振れていることが理想です。前方に3割、後方に7割振るのが理想であり、腕の振りと連動する骨盤に正しいひねりが生まれます。
⑤骨盤の前傾・後傾の度合い
骨盤ランニングでは、骨盤の回旋が重要です。やや骨盤を前傾気味にし、骨盤を前後に動かします。この時、骨盤を前傾にし過ぎると、反り腰になってしまうため正しいフォームではありません。また、後傾に意識を向けすぎると猫背になってしまうため、こちらも注意が必要です。
骨盤ランニングでは、骨盤を意識することは重要ですが、回旋では上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)を前後に動かすイメージを持ちましょう。骨盤の横に一番突き出ている部分であり、ズボンを履くとき引っかかりを感じる骨です。
⑥逆回旋すると脚を痛める
胸郭(きょうかく)と骨盤が逆回旋すると、脚を痛めるリスクが高まるため注意が必要です。一般的なランニングフォームを想像してみましょう。右腕を後ろに引くと、胸郭は右に回旋し、骨盤も右回旋することで右脚が上がります。
ところが、胸郭の右回旋とは逆に骨盤が左に回旋する人がいるのです。これが逆回旋であり、実は一定数存在します。逆回旋の状態で走ると、着地が前方に偏ってしまい、生み出した推進力にブレーキがかかってしまうのです。そのため、脚の裏や膝に負荷が発生し、痛みの原因になります。こうしたトラブルを避けるため、逆回旋のフォームを修正する必要があるのです。
⑦骨盤に痛みが生じた際は要注意
骨盤ランニングを行っている最中、またはランニング後に骨盤の痛みを感じた場合は、トレーニングを一時的に中断し十分な休息を取るようにしましょう。骨盤ランニングは、正しいランニングフォームであり、身体への負担も最小限で済むランニング方法です。しかしながら、骨盤が前傾・後傾どちらか一方に傾いていたり、左右に歪んでいたりなど何らかの不調を抱えている人にとっては、痛みを生じさせる要因となってしまいます。
正しいフォームで走行したからといって、身体の歪みがすぐに解消されるわけではありません。歪みは徐々に解消されていくのですが、その過程で今まで使用していなかった筋肉や骨が使用されるようになり、痛みとなって表れる場合があるのです。
不調の解消過程であるなら、トレーニングを続けるべきと感じる人もいるでしょう。痛みを感じながらトレーニングを続けると、正しいフォームの維持が難しくなります。身体の不調をかばうように不必要な場所に力が加わってしまうため、注意が必要なのです。痛みを感じていても、トレーニング習慣を継続したいと思っている人は、ストレッチ等に切り替えましょう。
⑧産後のランニングは要注意
骨盤ランニングは、距離や時間を調整すれば産後の女性でも可能です。ただし、いくつか注意点があります。まず、産後の女性はホルモンバランスの影響から、骨盤や靭帯が緩みやすく、痛みも生じやすい時期です。そのため、走る距離や速度、走行する時間には十分に注意しなければなりません。
骨盤ランニング中または骨盤ランニング後に、少しでも身体に不快感を感じた際は、すぐに中止するようにしましょう。痛みが生じてからの休息ではデメリットが多すぎるため、筋肉の張りや重だるさなどの些細な変化だったとしても休息が必要です。
⑨矯正タイツ・コルセットの使用について
矯正タイツやコルセットを着用しての骨盤ランニングは可能ですが、コルセットのみ使用には注意が必要です。骨盤ランニングでは、骨盤を回旋させる必要があります。腰から骨盤を硬く固定するコルセットを着用した状態では、骨盤の回旋が難しい可能性があるのです。
骨盤ランニングではポイントを意識した走行を!
骨盤ランニングには、様々なポイントが存在しますが、ポイントを意識した走行を続けると多くのメリットが得られます。ポイントを忘れずにランニングを続けるためにも、定期的に本記事を見返してみてくださいね。