床から荷物を持ち上げる時や、小さなくしゃみをした瞬間、尿漏れした経験はありませんか?日常生活の些細な動作で生じる尿漏れは、骨盤底筋の衰えが原因の可能性があります。「年齢のせい」「仕方がない」とそのままにしておくと、尿漏れ以外の不調が生じる可能性も…。そこで本記事では、尿漏れの原因である骨盤底筋について徹底解説します。骨盤底筋の衰えによる尿漏れ対策もご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
骨盤底筋は尿漏れの原因になる
尿漏れの原因として、様々な要因が考えられます。その中でも、近年特に注目されているのが骨盤底筋の衰えによる尿漏れです。そこで本項では、骨盤底筋と尿漏れの関係性をご紹介します。「骨盤底筋とはどこにあるのか」「骨盤底筋にはどのような役割があるのか」など、徹底解説しますのでぜひ覚えてくださいね。
骨盤底筋とは
骨盤底筋とは、恥骨(ちこつ)、尾骨(びこつ)、坐骨(ざこつ)の間にある筋肉の総称です。股の間にあり、性器や肛門を下から支えるように位置しています。骨盤底筋の役割は、臓器の維持です。骨盤の中には、膀胱、子宮、直腸など、重要な臓器が密集しています。それらを適切な位置で保つのが、骨盤底筋の役割です。
その他にも、尿道を締める、肛門の開閉を行い排泄をコントロールする、下半身と股関節周辺のバランスを保つなどの役割があります。つまり、骨盤底筋は、直接的に排尿に関わっており、尿漏れの要因として非常に重要なのです。
骨盤底筋が衰えるとどうなる
骨盤底筋は、様々な理由から衰えたり、緩んだりします。衰えたり、緩んだりすると、どのようなデメリットが生じるのでしょうか。具体的なデメリットは、下記のとおりです。
〇尿漏れしやすくなる
〇排便がスムーズに行えなくなる
〇ぽっこりお腹、タレ尻、O・X脚などボディラインが崩れる
〇姿勢が悪く猫背・反り腰になる
〇腰痛、関節痛等の不調が生じる
〇性交痛を感じやすくなる
〇勃起不全・勃起障害など性機能障害が生じる
〇骨盤臓器脱などの病気が発症する
骨盤底筋が衰えたり、緩んだりするだけで、これだけ多くのデメリットが生じるのです。さらに、骨盤底筋の不調によって生じたデメリットは、次のトラブルを招く要因になります。たとえば、尿漏れによって外出が不安になり精神バランスを崩す、痛みによって運動習慣が減少し肥満になるなどです。
骨盤底筋が衰える原因
骨盤底筋の衰え、緩みはなぜ生じてしまうのでしょうか。本項では、骨盤底筋が衰える原因をご紹介します。日常生活だけではなく、性別や年齢も関係するため、ぜひ自身のライフスタイルを思い出しながら読み進めてみてください。
日常生活によるダメージ
日常生活の中で、膝よりも下の位置から物を持ち上げる機会はありませんか?バックを持ち上げたり、子どもを抱きかかえたり、どのような生活を送っている人であっても少なからず発生する日常的な動作です。
腰をかがめて、低い場所から物を持ち上げると、骨盤底筋に負担が生じます。正しい姿勢で行っていれば、それほど過度な負担にはなりません。しかしながら、猫背や反り腰、捻りながらなど、不適切な姿勢で持ち上げると、骨盤底筋に負担をかけてしまうのです。さらに、持ち上げるものが重い場合、より一層の負担が骨盤底筋に生じます。日々のこうした負担により、骨盤底筋は緩んだり、衰えたりしてしまうのです。
仕事によるダメージ
仕事によって、骨盤底筋にダメージを与える場合があります。骨盤底筋は、姿勢の維持を担う骨盤を、根底から支えるという役割を持っている筋肉群です。不適切な立ち姿勢やバランスの乱れた座り姿勢によってダメージを受けやすく、骨盤底筋の緩みや衰えの原因になります。
特に、立ち姿勢によるダメージは深刻です。骨盤底筋に持続的な腹圧がかかり、過度な負担による骨盤底筋の緩みや衰えに繋がります。そのため、下記のような職業は、骨盤底筋が不調をきたしやすいです。
〇飲食店
〇アパレル店
〇ホテル・旅館スタッフ
〇美容師
〇保育士
〇介護士
〇看護師
〇製造業
〇清掃業
〇建設業
上記職業の中でも、頻繁に重いものを持ち上げる保育士、介護士、建設業は、特に骨盤底筋へのダメージが懸念されています。
分娩によるダメージ
分娩時、骨盤底筋が大きく開き、胎児の産道となります。その際、筋肉や繊維組織、神経系が損傷を受け、骨盤底筋の緩みや衰えの原因になるのです。これは、稀な状況ではなく、誰しもが経験しうる一般的な分娩となります。
分娩による筋肉や繊維組織、神経系の損傷は、産後徐々に回復していきますが、全ての状態が改善するとは限りません。神経を包む膜構造が残っているもののみ回復し、神経の引き抜きや分断が生じていた場合は、回復が難しいこともあります。
また、出産時の年齢によっても、回復が難しい場合があり、近年はその傾向が強いです。分娩する女性の年齢が若い場合は、回復しきれなかった骨盤底筋の役割を、他の臓器や筋肉等で補うことができます。日常生活に支障がないレベルまで、身体全体の回復としては可能でした。しかしながら、近年は出産時の年齢が上昇傾向にあり、骨盤底筋の回復が遅く、骨盤底筋の機能を補う身体全体の回復も難しくなっているのです。
産後女性
産後女性の骨盤底筋は、分娩による損傷をゆっくりと回復している時期です。産後1カ月~2カ月をかけ、骨盤底筋や周辺の筋肉組織等が回復していきます。この時期に、ゆっくりと身体を休めて過ごせる人は、恐らくそれほど多くはないでしょう。産まれたばかりの子どもの世話はもちろん、家事や仕事を行わなければならない女性も非常に多いです。
こうした骨盤底筋の回復時期に、重いものを持ち上げたり、長時間立ち続けたりすると、骨盤底筋の回復は非常に遅れてしまう可能性があります。産後直後は、妊娠中に分泌されていたホルモンが一気に減少し、身体だけではなく精神的なバランスも崩しやすいため、骨盤底筋以外のトラブルも生じやすくなるのです。
男性の原因
男性の骨盤底筋が緩むまたは衰える要因として、下記要因が考えられます。
〇肥満
〇便秘
〇力仕事
〇運動不足
妊娠や分娩、産後のない男性でも、骨盤底筋には様々なダメージが蓄積します。生活習慣に深く関わる肥満や便秘、仕事等の影響を受け、骨盤底筋の緩みや衰えが生じる場合があるのです。運動不足による筋力の低下、筋肉の不均衡によって生じる骨盤の歪みによる影響も懸念されます。
年齢に関する原因
性別を問わず、骨盤底筋は年齢によって緩み、衰えていきます。これは、どれだけ健康的な生活を送っていても、生じる可能性があるのです。年齢を重ねると、誰しもが筋肉を構成する筋組織数が減少していきます。筋組織の萎縮も加わり、筋肉量が低下していくのが一般的です。筋肉の衰えは、骨盤底筋とて例外ではありません。
骨盤底筋の衰えによる尿漏れ対策6選
本項では、骨盤底筋の衰えによって生じる尿漏れの対策方法を6つご紹介します。簡単に取り組めるものから、中長期的に取り組む方法までご紹介しますので、自身の状況に併せて選んでみましょう。ちなみに、複数の尿漏れ対策を同時に行っても問題ありません。
①尿漏れショーツ・シート
骨盤底筋の衰えによる尿漏れ対策として、尿漏れショーツ・シートの利用をおすすめします。骨盤底筋の衰えによって生じる尿漏れは、骨盤底筋を鍛えたり硬化を解消するマッサージが有効です。しかしながら、骨盤底筋の筋力量向上や硬化解消は、すぐに効果を発揮するわけではありません。そのため、仕事で頻繁に人に会う人や臭いが気になる人、下着や衣服の洗濯が大変だと感じる人にとって、筋トレやマッサージは適していないのです。
尿漏れショーツ・シートは、一般的な薬局や一部の衣服店、病院の売店等でも販売されています。ショッピングサイトでも販売されているため、購入に抵抗を感じる人は、インターネットを利用するのもいいでしょう。
②簡単にできる寝ながらトレーニング
骨盤底筋を鍛える簡単なトレーニングをご紹介します。このトレーニングは、仰向けに寝ながら行いましょう。まず仰向けに寝転がり、両膝を立てます。膝の角度は、それほど気にする必要はありません。仰向けの姿勢のまま、肛門、尿道、膣(性器)に力を込め、腹部側に引き上げるように意識しながら締めていきましょう。5秒間引き締めた後、力を抜きリラックスしてください。
ポイントは、5秒間の引き締めとリラックスです。トレーニングは、長くやればやるほど効果があると感じる人もいるかもしれませんが、骨盤底筋トレーニングでは逆効果になります。骨盤底筋への継続的な圧力は、緩みや衰えの原因になってしまうのです。5秒間引き締めた後、必ずリラックスする時間を設け、この動作を1日10回程度繰り返してみましょう。
③立ったままできる骨盤底筋体操
腰と同じ高さにある机やテーブル、カウンターを用意しましょう。両掌を着けるスペースがあれば、机以外でも問題ありません。脚を肩幅と同じ程度開き、用意した机に両手を着けます。両手に全体重を乗せ、肛門に力を入れましょう。
肛門を上手く締められたと感じたら、次に尿道、性器、下腹部の順番に締めあげていきます。下半身を同時に締め上げるのではなく、雑巾絞りのように徐々に圧力をかけていくのがポイントです。5秒~10秒かけじわじわと締め上げ、身体の力を抜きましょう。回数に制限はありませんが、20回~60回行うのが理想です。
④上級者向け骨盤底筋トレーニング
上級者向けの、壁を使った骨盤底筋トレーニングです。仰向けに寝転がり、両膝を90度に曲げ、両脚の裏を壁にぴったりと密着させます。脚は、腰幅程度に開きましょう。この姿勢から、臀部を持ち上げ、臀部と肩甲骨以外の背中を床から離します。背中ではなく、脚の裏への意識が重要です。壁を両脚の裏で踏み込むように意識し、臀部を持ち上げてみましょう。
肛門、尿道、性器を薄く伸ばすように力を込め、このまま10秒ほどキープします。キープ時には、呼吸を止めず、可能であれば腹式呼吸を行ってください。ゆっくり背中と臀部を床に下ろし、完了です。1日5回程度行いましょう。ただし、10秒間キープした後は、必ず10秒間のリラックスタイムを設けてくださいね。
⑤薬
骨盤底筋の緩みや衰え等によって生じる尿漏れは、薬での解消も可能です。一般的な薬局で販売されている物もあれば、泌尿器科で処方してもらう薬もあります。骨盤底筋トレーニングに使う時間がない人や、継続が難しいと感じる人は、薬を使う方法がおすすめです。
⑥手術
骨盤底筋の緩みや衰えを、直接的に解消する手術はありません。骨盤底筋の緩みや衰えによって生じる骨盤臓器脱を解消するためであれば、有効な手術が存在します。また、骨盤底筋の緩みや衰えをカバーするペッサリーと呼ばれるリングを使用する方法もありますが、これは女性限定の方法です。手術や医療機器の使用は、状況・状態等が関わるため、気になる人は総合病院や泌尿器科を受診してみましょう。
骨盤底筋による尿漏れは改善できる
骨盤底筋の衰えによる尿漏れは、今や世代・性別を問わず生じるトラブルとなっています。しかしながら、日常生活の改善や骨盤底筋を鍛えることによって、改善させることが可能です。仕事やプライベートが忙しく、骨盤底筋にさける時間がない人は、専門機関の利用を検討してみてもいいでしょう。費用を抑えたい人には、筋トレや日常生活の改善がおすすめです。自分のライフスタイルに最適な方法を実施し、骨盤底筋の衰えを回復させ、尿漏れ改善を目指してみてくださいね。