骨盤には、男女差があることをご存じでしょうか?実は、骨盤の大きさや形状、関連するトラブルなど、様々な違いが存在するのです。女性だけが得られるメリットや、女性だけに生じてしまうデメリットも…。そこで本記事では、男性と女性の骨盤の違いをご紹介しましょう。女性特有の骨盤の役割や、骨盤に関連するトラブルも詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
女性の骨盤の特徴7つ
男性と女性の骨盤の違いを理解するため、本項では、女性の骨盤に関する特徴7つをご紹介します。
①骨盤の形状
男性と女性の骨盤の違いは、形状です。女性の骨盤は、高さが低く、横に広がっています。矢状断(しじょうだん)で確認すると、男性の骨盤よりも仙骨(せんこつ)、尾骨(びこつ)が後ろに傾いているように見えるのが特徴です。
また、腸骨稜(ちょうこつりょう)と呼ばれる骨盤の上部が、男性の骨盤に比べて平たくなっています。恥骨下角(ちこつかかく)も女性の骨盤の方が広く、上底が長い台形のような形です。一方、男性の骨盤は、全体的に縦に長く、湾曲しているため深い形状をしています。台形よりも三角形に近い形をしており、女性の骨盤とは違い、歪みにくいという特徴も持っているのです。
②骨盤性差の時期
男性と女性の骨盤は、成長時期が異なります。幼少期の骨盤は、性別による違いはそれほど大きくはありません。もちろん、個人の成長速度によって差は生じますが、骨盤の性差が見られるのは、女性の場合は10歳~16歳前後です。
思春期の身体の変化にともない、横幅や奥行きに変化が生じ、臀部の膨らみ方も変わってきます。一方、男性の骨盤は17歳前後から、変化が生じるようです。ただし、女性と同様に個人の成長速度によって異なるため、あくまでも目安と捉えておきましょう。
③骨盤の開閉周期
産後の骨盤矯正は、「意味がない」という噂が存在します。噂の意味は、二つありますので、一つ一つ解説していきましょう。一つ目の意味は、骨盤はホルモン分泌によって自然に戻るた月経を迎えた後の女性の骨盤は、周期によって開閉します。月経開始日から2日~3日目までは、骨盤が開き、身体全体も緩みやすい時期です。個人差はありますが、月経開始から月経終了日まで、骨盤が開いた状態が続くこともあります。月経が終了すると骨盤が閉じ始め、身体の緩みも解消され、過ごしやすさを感じる女性も多いでしょう。身体だけではなく、精神面も落ち着きやすく、積極的な活動が行える時期です。
こうした骨盤の開閉周期には、プロゲステロンと呼ばれる黄体ホルモンの分泌が関係しています。プロゲステロンは、妊娠しやすい状態を作るホルモンです。妊娠・出産に備え、骨盤を開閉させます。一方、男性の骨盤には、こうした開閉周期がほとんどないとされているのですが、意見が分かれている事柄です。”男の生理”という言葉を聞いたことはないでしょうか。男性にも、女性の生理のような心身ともに不調の時期が存在し、骨盤の開閉が生じるといった考え方です。
男性の身体の中でも、プロゲステロンは分泌されますが、ごく少量だと考えられています。(参考:https://www.okayama-u.ac.jp/user/kensa/kensa/seisen/prog.htm)
プロゲステロン以外のホルモン分泌による骨盤の開閉が生じる可能性は否定できませんが、現時点(2024/10月時点)では、特筆すべき論文は確認できませんでした。ただし、男性の身体の中にも様々なホルモンが分泌され、状況によって変化しています。ホルモンの影響により、心身に変化が起きることも否定できないのです。
④骨盤の役割
男性と女性の骨盤は、共通する役割もありますが、異なる役割も持っています。共通する役割は、下記のとおりです。
〇姿勢の維持
〇上半身・下半身のバランスを保つ
〇骨盤内の臓器を保護する
〇骨盤内の臓器を適切な位置で保つ
〇関節と連動し動作のサポート(立位・座位等)
〇生殖器の保護及び働きのサポート
上記の共通点とは違い、女性の骨盤だけが持つ重要な役割は、妊娠・出産に関するものです。まず、妊娠の維持には骨盤の働きが重要になります。骨盤の中には、子宮や卵巣といった妊娠に必要不可欠な臓器があり、骨盤の歪みは、子宮や卵巣への栄養不足に繋がってしまうのです。ホルモンバランスが崩れることによって、不妊の原因と考える婦人科も存在します。
また、出産する際も、骨盤の働きが重要です。分娩時に骨盤が開くことによって、胎児は産道を通り生まれます。一方、男性の骨盤は、強度や安定性が特徴です。月経周期や妊娠・出産に合わせて柔軟に動く女性の骨盤とは違い、変動が少なく強度・安定性が高い傾向にあります。強度・安定性が高いことによって、女性よりも重い物を持ち上げることができたり、力強い動作が可能になるのです。
⑤骨盤周辺の特徴
男性と女性の骨盤には、周辺の違いも見られます。女性の骨盤周辺は、関節や靭帯が柔らかく、動きが滑らかです。そのため、骨盤が歪みやすく、骨盤の歪みによって生じた不快感を感じやすくなります。
一方、男性の骨盤周辺は、女性の骨盤周辺と比較すると筋肉が発達している場合が多いです。骨盤が歪みにくいというメリットはありますが、骨盤の動きが硬くなり、歩行のしづらさを感じやすいのがデメリットでしょう。また、長時間の座位による作業によって、骨盤が歪んでしまいやすいのが特徴です。事務職や長距離運転手など、座っている時間が長い男性は、骨盤周辺のストレッチを定期的に行うようにしてみましょう。
⑥骨盤に関連する輪郭の違い
男性と女性は、骨盤の形状が異なっています。そのため、身体の輪郭も異なるのです。女性の骨盤は、男性の骨盤よりも横に広がっています。臀部が膨らみやすく、くびれができやすいのが特徴です。
一方、男性の骨盤は、女性の骨盤のように横に広がっていないため、くびれができにくく、腰から脚まで一直線に落ちるような輪郭になっています。また、大腿骨の角度や肋骨から骨盤までの距離など、骨盤に関連する骨格の違いも少なくありません。
⑦骨盤の不調によって生じるトラブル
男性と女性とでは、骨盤の不調によって生じるトラブルが異なります。共通するトラブルもあるため、まずは共通トラブルについてご紹介しましょう。
〇姿勢の維持が難しくなる
〇関節等に痛みが生じる
〇尿漏れなど排泄トラブルが生じる
〇むくみ・冷え性が悪化する
〇交感神経と副交感神経のバランスが崩れる
〇消化器系に不調が表れる
〇循環器系に不調が表れる
〇ぎっくり腰や椎間板ヘルニア等重病に繋がる
骨盤の不調は、男性・女性を問わず多くのトラブルの原因になります。一方、女性にのみ生じるトラブルは、下記のとおりです。
〇生理痛が激しくなる
〇生理不順が生じる
〇骨盤臓器脱が生じる
〇その他婦人科系の疾患
骨盤が歪むと、骨盤内にある子宮や卵巣に不調が生じます。血流や栄養素の滞りによって、生理痛の悪化や生理周期の乱れが生じる可能性があるのです。また、骨盤の歪みが激しく骨盤底筋がゆるむと、骨盤臓器脱と呼ばれるトラブルが生じます。膣の中から、子宮や膣壁、膀胱や直腸が出てきてしまうトラブルです。産後女性や、中高年の女性に多く発生します。
骨盤臓器脱は、薬や手術での改善が可能です。しかしながら、数日間の入院が必要になり、小さな子どもがいる女性や忙しい女性にとっては、早期解決が難しいでしょう。そのため、骨盤臓器脱は、未然に防ぐことが重要です。骨盤の歪みとともに、骨盤底筋を整えるように意識しましょう。
骨盤に関する噂
骨盤を調べてみると、まことしやかに囁かれている噂が存在します。そこで本項では、骨盤に関する噂の真相をご紹介しましょう。ダイエットやボディラインに関する噂も存在しますので、美しさに興味がある人はぜひ参考にしてくださいね。
女性の方が脚が長い
骨盤の形状や大腿骨の角度の違いから、女性の方が脚が長いといった噂が存在します。この噂は、間違いです。身長と股下の長さを測定し、比率を算出した股下比率は、男性が平均45%、女性は44%でした。股下比率の数値が高ければ脚が長く、数値が低い場合は脚が短いと判断します。つまり、男性の方が、やや脚が長いということです。ちなみに、日本で活躍する女性モデルの股下比率は、50%前後だと言われています。
骨盤の幅を狭くする方法がある
臀部や下半身の膨らみを気にして、骨盤の幅を狭くしたいと思っている人は、少なからず存在します。その中で、「骨盤矯正で骨盤の幅を狭くできる」と考えている人がいるのです。
骨盤矯正は、骨盤の位置を適切な場所に戻し維持するための方法であり、骨の形そのものを変形させるような施術ではありません。骨盤をはじめ、人間の身体を形成する骨は、人力のみで変形することはないのです。そのため、エステや関連マシンの謳い文句として「骨を縮小させる」などが紹介されている店舗には、十分に注意しましょう。
韓国では骨盤を大きくする施術が人気になっている
美容大国として知られる韓国では、骨盤を大きくする施術が流行りつつあるのです。骨盤が大きくなると臀部にボリュームが出て、女性らしい身体つきになれると話題になっています。
その名も、骨盤フィラーと呼ばれる施術であり、骨盤にヒアルロン酸を注入する方法です。ヒップディップスと呼ばれることもあり、お尻のへこみを直したり、曲線をより美しく整えることを目的として利用する人もいます。
また、アメリカでもヒップアップ整形が流行っているのですが、韓国の整形手術とは異なるものです。アメリカのヒップアップ整形は、インプラントを挿入したり、シリコンを注入します。日本でも、類似する豊尻手術がありますが、日本の場合は脂肪を注入または吸引する方法です。
骨盤は性別によって特徴が異なる部位!
骨盤は、男性・女性によって形状や役割、生じるリスクが異なる部位です。特に女性の場合、骨盤や骨盤底筋群の不調により、臓器が体外に露出する骨盤臓器脱などのリスクが存在します。そのため、骨盤や周辺筋肉を適切に鍛え、整えておかなければなりません。また、デリケートで重要な部位のため、美容整形や矯正グッズの使用は、慎重に選択するようにしましょう。